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vol.25 かおりん!場づくりって何ですか?レポート

2019.4.25 長谷川香里

かおりん!場づくりってなんですか? 参加者16名

自己紹介から 「つなぐ」をテーマに活動されている長谷川さん。10年前に姫路城に近いビルの4階に納屋工房というコミュニティスペースを作り活動を始められました。そして2018年の結婚を機にコミュニティスペースを閉じられ、姫路を中心とした播磨地域と旦那さんと暮らす名古屋に活動の場が広がっています。 現在の肩書としてはアドバイザー、コンサルタント、コーディネーターなど。多様な役割の中で「つなぐ」を実践されているようです。

1.納屋工房コミュニティスペース時代

■納屋工房ってどんな場所 納屋工房は大手前公園のすぐ南にあるビルの4階にあり、窓から姫路城をよく見ることが出来る場所でした。キッチンを完備したフロアは80㎡あり一部を事務所として利用しつつ、大半をコミュニティスペースとして活用されていました。床材には神河町の杉を使い、床の設置には一般の方々も協力されたそうです。 運営テーマはもちろん「つなぐ」。つなぐに関わる事ならなんでもOKで、使いたい人が自分なりに「つなぐ」を解釈して多様な使い方をされていたそうです。 会議室、カフェ、マッサージ、エステ、バンケット、演劇、ヨガ、ストレッチ、ギャラリー、写真スタジオ、三の丸広場のイベント事務所、和菓子体験などなど、あらゆる使い方をされていました。

■多様な場所 特徴的だなーと思ったのはその運営方針です。ルールはただ一つ 「誰かに嫌な思いをさせない」 例えばライブイベントをする時、どのくらいの音量ならいいか?それは主催者が自分で考えて行動する。長谷川さんは隣の事務所で見守っているだけ。

「自由を自由と思える人もいれば、何も言ってくれないのを不自由と感じる人もいる」と長谷川さんはおっしゃっていました。 また、子供が裸足で遊んだり、自宅を開放したくない人がカルチャー講座を開いたり、納屋工房の良さを色んな人が自分なりに解釈して使っていました。そんな余白いっぱいの納屋工房だからこそ、多種多様な人たちが訪れているようです。お年寄りから子供まで、さまざまなイベントが開催されているので、いろいろな時間にいろいろな年齢層、いろいろな職業の方々が集まる場所になったそうです。

以前、納屋工房の魅力について長谷川さんは調査をされたそうで、その一部を紹介していただきました。調査は参加される方が納屋工房のどこに魅力と感じているか?大きな項目として3つを設けて利用者110名にヒアリングをされたそうです。

【環境】姫路城を眺めることが出来る、駅から歩いてこられる など 【機能】出会いやつながり、気づきや学び など 【運営】制約のない場所、利用しやすい環境 など 結果、利用者が一番評価したのは【機能】(出会い、つながり)でした。お城に近い場所が特徴的な納屋工房ですが、【環境】と答えた方は意外に少なかったそうです。

■かおりんが考える場づくりのエッセンス タイトルの「かおりん!場づくりってなんですか?」らしく、長谷川さんが実践の中でまとめていった場づくりの3要素と10のポイントを挙げていただきました。

《場づくりの3要素》 『人』一人では何もできない。一緒にやる、ちょっと手伝う、誰かを紹介する、見守る 『場』何かできる場、イベントが出来る場、作戦会議が出来る場 『事』この日のこの時間に何かをする。イベント、出会い、関係を深める

特徴的だったのは『人』の項目で、「ずっと見守っていることも大切な要素なんですよ」っておっしゃっていたことでした。そして、3つの要素を包含する場所があって、それを見守る人がいる。見守っている人というのはただ事務的に管理するだけではない、雑談が出来るような人と教えてくれました。

《多様な人が集まる場づくりにおける10のポイント》 ・滞留する仕掛け:用事無くてもだらだら居られる。ちょっとチラシを見たり本を読んだり ・関りの多様性:主催者、参加者、手伝う人、いろんなかかわりを持つ ・情報の受発信:場所を運営する側としてイベントの情報を編集し発信 ・雰囲気づくり:何となく話すきっかけになるようなものを置いておく ・オープンさ:いつでも来ていいよという雰囲気 ・公共性:市がやってないけど偏ってない、誰でもこれそうな感じ ・決めごとのゆるさ:時間にしばられない、他の人に迷惑をかけなければいい、細かい決めごとはしない ・立ち上げからの関り:みんなが関わると私が作ったって思える、思い入れが出来る ・変化の許容:最初のルールもやりながら状況に応じて変化させる ・おせっかい:さりげなく情報を伝えたり、背中を押したりする

2.納屋工房コミュニティスペースを卒業して スペースを卒業した長谷川さん。これからの関心事もやはり“場づくり” そして場づくりの中でも特に興味を持たれていることを2つ挙げてくださいました。

■名古屋でつながり実験? 昨年ご結婚をされ名古屋では旦那さんのお弁当を作るなど主婦業に励んでらっしゃるそうです。そして、あえて積極的な活動をしない中でどんなつながりが広がるか?を実験されているそうです。実感として「主婦業は広がらない」とおっしゃっていました。とは言え、姫路での活動や知人からの紹介で徐々に広がりも出てきたらしく、一緒にご飯を食べるお友達もでき、「これから何か広がりそうな予感がする」と楽しそうに話されていました。

■播磨ではひっぱりだこ 一方、姫路では順調に各地からお仕事のお話が来ているようです。お仕事としては「場づくりをしたい人」のお手伝い的な内容。 コープこうべさんがつくる姫路市青山のコミュニティスペースでは、場づくりにおける10のポイントを意識しながら、地域の人たちで壁に色を塗ったり(最初から関わる)、サポーター研修で何か出来そうな人に声がけ(おせっかい)をすすめたりしているそうです。ただ、高齢者のサポーターの方には「おせっかいの声かけ」がなかなか難しいようです。 ほかにも播磨科学公園都市でコミュニティスペースづくりや湯原温泉で庁舎改修に合わせた窓口付近のオープンスペースづくり、姫路市のパークマネジメントでは地域の公園利用から次の施設整備をどう考えるか?などいろんな地域のいろんな場づくりを紹介していただきました。

■気になること①教育と福祉 教育や福祉は場づくりと相性がいいとおっしゃいました。実例として小学校の総合学習で地域の人たちを呼びこむ場。地域の人たちがゲストティーチャーとして話すわけではなく、子供たちの中にそっと寄り添う場。大人が子供たちにどうやって寄り添えばいいのか大人自身が考える。そういった場づくりをされていました。それ以外にも職人さんを育てる専門学校の授業も担当されていたりも。学生にとって興味のない授業をどう充実させるかを考えているそうです。地域の人たちとの関りとして、行き場のない制服を交換し合う制服交換会なども。大人も子供も地域を大切にしながらどう関係性を作っていくか?そんな参加者が主体的に考える教育を場づくりの中で実践されていました。

■気になること②(場を選ばないコンテンツ) 場づくりには場が必要ですがコトも必要、そのコトであるコンテンツを最近はつくっておられるそうです。 “カレンダー市”は納屋工房時代から続いているイベントです。カレンダーって年末にいろんなところからもらうモノというイメージがありますが、意外に無い人の所には無い。そんなミスマッチを解消しようと始められたイベントで、今年は姫路の駅前や各地のコワーキングスペース、そして名古屋でも開催されました。そのほかにも播磨地域の方々の生き方を聞く“百人の哲学”や女性の生き方を考える“HAPPY WOMAN FESTA HARIMA”、子供のころ得意だった折り紙を使ったランプシェードを作るワークショップ“Origami Light“など

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まだまだ話足りないような長谷川さん。とはいえ時間だったので、参加者同士のワークショップに移りました。そして、質疑応答に。 参加者を交えた「場づくり」についての話し合いはかなり盛り上がりました。長谷川さんが話足りなかったことにも話題が及び、用意していた資料の続きを急遽映しながらのディスカッションになりました。

■場づくり“について形式知を生み出し継承することは可能か? 長谷川さんが大学院で研究を積み重ねながら(今のところ)答えは「継承はムリ!」ってことでした(・_・;) 「場所に人が集まるのか?」「人が集まって場になるのか?」「地域に残して継いでいって欲しい。」「汎用性を作って残していきたい」 場を作るとそんな想いにかられるかもしれないけれど、いいな?と思えるものは残さないといけないのか?そんな問いに対し長谷川さんはこうおっしゃいました。 人が起点となって場が出来るのなら、その人がいなくなれば場は続かないし継承なんかしなくていい。 出来るわけない。

■続けられない場、衰退の原因 そして、続けたいけど続けられないものとして、『マンネリ』『常連の壁』『経年劣化』を挙げてられました。 ・場を見守る人は常にその場にいるので、新しい情報に触れにくくマンネリ化する。 ・常連が集まると見えない透明の壁が出来る。 ・目新しい場所でも長く続けると他に新しい場所が出来て経年劣化する。 そんなものに固執することは無く、その人がその人らしい場づくりをすればいい。長谷川さんはそうおっしゃいました。

最後に情報発信のコツについて長谷川さんは「年齢層などに応じて発信するツールを選ぶこと、発信する言葉については、良さは伝えつつ強くは勧めないこと」っておっしゃいました。長谷川さんらしい余白の作り方を最後に話して頂いたように思えました。

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感想

長谷川さんはいつもニコニコ明るい人です。そして、誰の心にもスッと入っていける軽やかさを持った人です。そんな長谷川さんだから、周りの人たちは素直に自分をさらけ出し、長谷川さんがつくる場に居心地の良さを感じるのだと思います。 「歩道のバレエ」 ジェイン・ジェイコブスは自著「アメリカ 大都市の死と生」でまちなかに暮らす人たちが歩道を舞台として生き生きと暮らす風景をバレエのように表現しました。 自分の時間を自分なりにふるまい、役割が終わったら舞台から降りる。長谷川さんが話された「人が起点となって場が出来るのなら、その人がいなくなれば場は続かない」はまさに「歩道のバレエ」だと思いました。 自分らしくどうやって過ごすか?それは与えられたものでは無く自分の頭や気持ちに従うもの。だからこそ、参加者が主体的に動けるように長谷川さんはいろんなところに『余白』を残したり、作ったりしているのだと思います。 今回のMANABIYAもそんな場でした。だからこそみなさんの顔には笑顔があふれていました。こんな場を経験すると、これからの長谷川さんに期待せずにいられません。 ますます“かおりん“の場づくりが楽しみになりました。      (藤輪 友宏)

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