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vol.14 石原凌河さん 災害という想定外に備えて レポート

2018.4.24 石原凌河(龍谷大学政策学部 講師)

災害という想定外に備えて~防災から始めるまちづくり~ 参加者9名

【振り返り】

今回のテーマは「防災」でした。僕自身、東日本大震災で石巻の支援に行った経験から、とても思い入れのあるテーマです。反面、大上段的に物事を語りそうになるジレンマもあり「防災を自分事に」と言ってもなかなか日常の生活に落とし込む難しさを感じていましたし、自分自身も日常には落とし込めていませんでした。また、当事者ではなく被災後の現地に入った人間としては防災というより復興のプロセスに疑問を持っているだけで、災害時の混乱や命の確保など、防災のキモの部分に対して想いを持っているわけではないことも二の足を踏ませたところはあると思います。

今回の石原さんのお話は命の大切さ、本当に支援を必要としている人たちへの配慮、防災が持つジレンマ、伝えることの難しさ、復興の本質などすべてを余すところなく話していただいたと思います。印象的だったのは大上段に構えそうな「防災」という学問に対し常に疑問を持ち市民のレベルまで落とし込み、マイナス的に思考しがちな「防災」を常にポジティブにとらえようとするその眼差しでした。それは、石原さんが防災を目的とせず人々がつつがなく日常を過ごすための手段として捉えているからだと思います。

今回のお話は僕自身も目からウロコの話がたくさんあり、とても刺激的な回となりました。そして、土木技術者としては震災復興で土木が果たして来た役割に誇りを持ちつつも、人々の生活に根差さない大規模な構造物に憂いを持っていました。でも、石原さんの前向きな姿勢をみるとその土木構造物にどれだけ意味(meaning)を持たせるか?そして、住民とその意味を共有するプロセスづくりこそが取り組むべきことだと思いました。 石原さんが言う「防災とまちづくりを架橋する」という考え方。同じまちに対し違う目線を持ちながらプロセスは実は同じというところがすごく勉強になりました。防災は「迅速に日常生活に戻す」に対しまちづくりは「日常生活の質を高める」。流行りの横文字を使うとレジリエンス(防災)とサスティナブル(まちづくり)という感じなのかなと思います。

ただ、僕の中での「まちづくり」評はすこし異なります。僕は「まちづくり」という言葉の寛容性の中に潜む危険性を感じています。「まちづくりしています。」って言うとなんか知らないけど良いことしているのかな~と思わせる力を持っています。反面、何をしているのかよくわからない。「まち」とは人と人がかかわりを持つ社会の「場」であり、それは特定の人が「つくる」ものでは無く行政、商業者、会社員、製造業、学生、高齢者、子供などなど・・・すべての人が作っているものだと思います。なので、社会に関わる=「まちづくり」だと思っており、福祉の分野からまちづくりをしているとか、建築の分野からまちづくりをしているとか、コミュニティの形成からまちづくりをしている。そして、防災の分野からまちづくりをしている、という視点だと思います。

社会がシステマティックになり、実生活や思考に余白がなくなりつつある現在、特に防災という命に係わる部分には余白を持ち込む余地は少なそうに見えますが、そこに余白を見つけそこから違う価値観を少しずつ広げていく石原さんの活動はとても素晴らしいことだと思います。僕の中では「防災の水先案内人」もしくは「混乱を整える人」だと思いました。

いずれにせよ、石原さんは出会うたびに僕に刺激をくれる人であり、今回も大きな刺激をもらえました。また、いろいろな分野の人と話すことの楽しさを再認識することが出来ました。

                                 (藤輪 友宏)

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